「多様な人材は野村グループ最大の財産」野村ホールディングスがアルムナイネットワークを立ち上げた背景とは

野村ホールディングス株式会社(以下、野村)が、2023年1月に「野村ホールディングス アルムナイネットワーク」の運営を開始しました。

野村ホールディングスは、多様な人材は野村グループ最大の財産との考えのもと、社員がさまざまなバックグラウンドや異なる価値観を互いに認め合いながら協業することで、お客様の多様なニーズに応え、より付加価値の高いサービスを提供できると考えています。

こうした考えをさらに進め、退職した人材も他社で得た知見を活かして野村グループのプラットフォームで価値を創造できる人的資本と捉え、中長期的に良好な関係を築くために野村ホールディングス アルムナイネットワークを構築することとなりました。

今回は野村ホールディングス株式会社 グループ人事兼経営戦略担当 吉田執行役員に詳しくお話を聞きました。

※こちらは過去に野村グループに在籍していた方専用のネットワークです

「野村で働いてよかった」というメッセージを広げたい

——アルムナイネットワークを立ち上げた背景について教えてください。

吉田:2年半前に人事に異動したことをきっかけに、事業部門にいた頃から興味を持っていた、アルムナイネットワークを自社でも取り組んでいこうと考え動き出しました。アルムナイネットワークに可能性を感じていたのは、欧米系の投資銀行やコンサルティングファームがアルムナイのネットワーク化に取り組んでいたからです。

また、退職した自分の元部下との交流も気付きのきっかけでした。外で活躍し、経験を積んだ元部下に野村に戻ってきなよと誘っても「(一度出て行った人は)戻れないですよね……。」という反応が多いのです。そのイメージを改め、戻りたい人が再入社しやすい仕組みを整える必要がありました。

一方で、退職した人たちは、辞めた後も野村で働いていたことを誇りに思ってくれている方が大勢います。退職者が「野村で良い経験ができた」「野村で働けてよかった」と外で発信してくれるのは、これから野村に入ってくる人に対し、「野村で働くことで圧倒的な成長を得られる」というメッセージになり、野村にとっては採用ブランディングにも繫がります。

そのメッセージングを効果的に行うためにも、ぜひ退職者に野村の味方になってもらいたい。我々として意図したメッセージを発信して、職場として野村がどういう場なのかをアピールしてもらいたいと考えています。

これらの発信が、結果としてアルムナイの方々にとっても「野村アルムナイ」というブランドとなり、未来の社員だけにとどまらず、現在働いている人に対しても、野村にいてよかったなと思ってもらえる機会になるでしょう。

——社員の再入社や採用ブランディングの観点で立ち上げを決められたのですね。

吉田:金融機関としてビジネス上の創造力に加えて高度なリスク管理を求められる中、その一環として人材の多様性確保は必須です。ずっと野村で頑張ってきてくれた社員はもちろん大事ですが、中しか知らない人材で会社を固めるのは今の時代リスクになり得ます。外の世界を知った人がもたらすバリューはとても大きいものです。

全くのニューカマーももちろん大事ですが、過去に野村で働いていて、野村を知っている人はキャッチアップの早さが違うため、大変貴重です。

外の世界を知った社員が戻ってくるハードルを下げたい

——今回のネットワーク立ち上げ前は、退職者と会社はどのような関係でしたか?

吉田:「蔦友会」というオフィシャルな退職者の会が既にありましたが、どちらかというと定年退職した方を中心とした同窓会的なネットワークで、再入社等の機能を持つ繫がりではありませんでした。退職して外で活躍している現役世代のアルムナイのネットワークは公式にはなく、社員との個人的な繫がりにとどまっていました。

そのほか、元社員がCFOとして転職したベンチャー企業のIPOをお手伝いするなど、転職した社員がクライアントとなることもあります。卒業後に活躍されている方と仕事でご一緒できるのは嬉しいものです。

——退職された後、実際に再入社で戻ってきた人はいますか?

吉田:実際にいます。外で経験を積み、部長クラスなど要職に就くケースもあります。戻ってきた人に対しても実力主義で、外に出ていたからといって昇進が遅れるということはありません。出て行ったときより肩書きが高くなって戻ってくる人もいる。もちろん専門職として脇に置くということもなく、社内のメインストリームに帰ってきていただきます。

アルムナイネットワークの立ち上げにより、今後はそうした人材獲得をもっと戦略的に進めていきたいと考えています。また、退職者から見て一度出て行った敷居を再び跨ぐというのはハードルが高く見えるので、ネットワークで交流を図ることにより、そのハードルを下げたいですね。

——再入社で戻ってきた社員に対して、社内の反応はいかがでしたか?

吉田:最初は話題になりますが、比較的早く順応している気がします。戻ってきた社員が活躍してくれるので、順応せざるを得ないという面もあるでしょうね。海外オフィスではもともと出戻りは身近ですから、さらにスムーズに受け入れられていますが、日本国内でも徐々に雰囲気が変わってきています。

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——導入に当たり、苦労した点があればお聞かせください。

吉田:アルムナイの再入社や社内外への職場のブランディングを目的として始めた取り組みですが、目的については一定の理解を得られている一方、「一度出て行った人にウェルカムな姿勢を取るのは会社としてどうなのか?」など、「一度出て行った人」を歓迎することに対して心理的な抵抗感を持つ人もいます。また、現役社員に対して辞めることを推奨しているように受け取られないかといった心配する人もいました。

正直なところ、心理的抵抗感や不安は完全には拭いきれていないと思います。そのような事情もあり、今回は部分導入として、人材流動性が高く、専門性を活かして他社にチャレンジする方が多い部門を対象にスモールスタートすることにしました。

また、競合他社に転職した人との交流はコンプライアンスや情報管理の観点からどうなのかという懸念も挙がりましたが、アルムナイと現役社員が接点を持つわけではないため、セキュリティが仕組みで担保されていることを丁寧に説明しました。

キャリアデザインの考え方も進化している

——最近の野村グループ社内での変化を教えてください。

吉田:新型コロナウイルス流行の影響は大きく、野村においても一人一人の働き方を見直す契機になりました。働き方に対する柔軟性はコロナ前に比べて格段に上がり、在宅勤務も最大8割までの範囲内で部門の業務特性に応じて柔軟に検討できるようになりました。

人材マネジメントもジョブ型的な雇用志向に変化してきています。

採用職種が細分化され、社員はより専門職としての活躍を期待されます。入社後の育成プログラムや評価制度も全社員一律ではなく、専門性や各部門の業務特性に合わせて実施しています。

また、社員に中長期的なキャリア形成を自分で考えてもらう「キャリアの自律」という考え方を促進しています。社員一人ひとりが自身のキャリアプラン——どうありたいか、そのためにはどのようなスキル開発を行うか——を考えるための「キャリアデザインシート」を今年1月にローンチしました。シートをもとに上長からサポートやアドバイスをもらう仕組みと合わせて活用します。配置転換も、会社が権限を持つのは従来どおりですが、本人の希望や特性をこれまで以上に考慮して実施していくことになります。このように、キャリア自律を前提とした仕組みづくりを整えているところです。

再入社で戻ってくる社員は、自分のキャリアに対する意識をしっかりと持っており、その中で野村でどのようなキャリアを積みたいかビジョンを持っていることが多いです。その点でアルムナイの再入社ともマッチした制度となっています。

野村グループアルムナイの今後

——今後、会社としてアルムナイとどのような関係性を構築していきたいですか?

吉田:まずは多くのアルムナイに認知・登録していただくのが目標です。その上で、我々から情報発信を行い、今野村で何が起こっているか、どんな会社なのかをしっかり伝えていきたいです。

アルムナイ本人が野村に戻りたいと感じたときに敷居の高さを感じずに戻ってこられる、または野村に知人を紹介したいと思ってもらえるような関係性を築きたいです。我々人事だけで行う採用活動には限りがありますから、アルムナイが再入社を検討したり、緩やかなリファラル採用を行ってくれたりしたら理想的ですね。

また、卒業後のアルムナイの活躍を戦略的にピックアップしていきたいです。現在も野村出身の経営者が若いころのエピソードを発信してくれることがありますが、そのようなブランディングに繋がる事例を積極的に発掘・発信していきたいですね。

さらに、外部から見た野村の姿や、辞めてから役に立った野村での経験などを多様なキャリアの方にお話を聞いてみたいです。

——最後に、アルムナイへのメッセージをお願いします。

吉田:敷居はまったく高くないです。開かれたネットワークにしていきたいので、ぜひご登録をお願いします!

※こちらは過去に野村グループに在籍していた方専用のネットワークです