退職プロセスがもたらす
長期的価値

 組織は新しい従業員を迎え入れ、定着させることには多くの時間やリソースを費やすが、オフボーディング、すなわち辞めていく従業員を送り出すことに労力やリソースを割くことは、ほとんどない。去りゆく従業員は形式的な退職者面談、引き継ぎに関する指示、退職後の手当や資産に関する型通りの説明は受けるかもしれない。だが、それだけだ。時に短気または無礼なマネジャーと向かい合うこともあれば、極端な場合には元の上司や同僚から裏切り者扱いされることもある。

 退職プロセスに注意を払わないのは間違っている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって何百万という雇用が失われる前から、労働市場では流動性が拡大していた。米国労働統計局によれば、米国の平均在職期間は約4.1年に短縮し、離職率が上昇している。企業はそろそろオフボーディングについて慎重に検討すべき時だ。人材管理の一環としてその必要性が高まっていることもあるが、それだけでなくオフボーディングは長期的価値を創出する機会にもなる。

 経営コンサルティング会社はこの点に関して、以前から先導的な存在である。スタッフの移行を支援し、今後の成功に向けた新たな出発を喜び、アルムナイプログラムを通じて継続的に連絡を取り合うなど、大学が卒業生に対するように、退職する従業員に対応するのだ。その動機は実にわかりやすい。それまで同僚だったコンサルタントが将来のクライアントになりうるからだ。他業界でも同じような動機が存在すると筆者らは考えている。アルムナイが顧客やサプライヤー、ブーメラン社員、現従業員のメンター、あるいはブランドアンバサダーになるかもしれない。