IHIのアルムナイ向け勉強会をレポート!アルムナイとのビジネス協業実現のために必要なこととは

2023年3月23日19時より、株式会社IHIが自社のアルムナイ向けに勉強会を開催しました。
アルムナイへの価値提供を目的に、研修プログラムを提供する外部企業と連携して行ったイベントです。
メインプログラムは、「つながり続けること、磨き続けること」と題した、電通アルムナイの黒岩乙水さんによる講演。その一部をレポートします。

講演「つながり続けること、磨き続けること」

SNSなどのプロフィールで、属性や趣味、好きなものが「/(スラッシュ)」で区切って書かれているのをご覧になったことはありませんか? 今日はそんな「/」の記号を元に、キャリアや越境について考えていきたいと思います。

台湾のデジタル担当大臣のオードリー・タンさんは、「20年後の子どもはどのような職業を目指していると思いますか?」という質問に対して、「20年後は職業という概念がなくなっているのではないでしょうか。20年後の子どもたちは特定の職業ではなく、それぞれが持っている“スラッシュ”を組み合わせて新しい価値を出す、“スラッシャーズ”な生き方をしているのだと思います」と答えました。

これは今後の生き方やキャリアを考える上で、非常に大事な観点だと思います。

スラッシュを一つの境界だとすると、それをどう広げ、深めていくか。この「広げる」「深める」が越境といえるのではと思います。

「広げる」は、わかりやすいですね。参加者の皆さんはIHIアルムナイですから、IHIを退職し、次のチャレンジを行ったことで、スラッシュは一つ増えているはずです。

また、会社を辞めずとも「深める」ことはできます。例えば、僕が過去に在籍していた電通であれば、マーケティング、クリエイティブ、イベント運営など、社内にさまざまな仕事があります。これらはそれぞれ電通にひもづくスラッシュです。

つまり、異動したり新たな分野を勉強したりと「深める」ことで、同じ会社の中でもスラッシュを増やすことはできるでしょう。

僕は、越境には「意図的な越境」と「偶然の越境」の2つのタイプがあると思います。

例えば、僕が電通を退職したのは、意図的な越境です。一方、僕は現在実家がやっている福祉法人の理事を担っていますが、これは地元に帰った時に親から打診されたことがきっかけでした。つまり、偶然です。他に、会社員が予期せず異動や出向を経験するのも偶然の越境といえるでしょう。

この際、大事なのは、意図的だろうが偶然だろうが、結果は分からないし、全ては捉え方次第だということです。うまくいかないことがあっても、それをどう捉えるかは自分次第。越境の瞬間には、意図的、偶然に関係なく、楽しんで全力で向き合うことが重要なのだと思います。

スラッシュとつながり続け、スラッシュ同士をつなぎ合わせる

スラッシュの考え方には、二つのポイントがあります。

一つは、新しいスラッシュに移行したとしても、もともとのスラッシュとのつながりを持ち続けること。もう一つは、自分のスラッシュをつなげていくことです。

さまざまなスラッシュがあるけれど、それらはバラバラに存在しているわけではなく、その組み合わせが新しい価値をつくります。意図的につなげることもあれば、結果的につながっていくパターンありますが、いずれにせよ何のスラッシュを持っているかがその人の個性や価値であり、それらをつなげていくことで自分らしい生き方ができるのだと思います。

一つ目の「つながり続ける」については、アルムナイネットワークがまさに一例です。僕も電通アルムナイネットワークに入っていますし、他に「電通コーチングチーム」という、僕が退職する前に仲間と一緒につくったチームにも入っています。

コーチングチームでは月1回勉強会をやっていて、今でもワークショップに登壇をすることがあります。僕は電通がいまだに大好きですし、育ててもらった感謝もあるので、何らかのかたちで恩返ししたいし、応援したい。そんな気持ちでやっています。

放っておくと、大事な資産である過去のスラッシュとの縁は簡単に切れてしまいます。大事なスラッシュなのであれば、意図的につながる姿勢が必要だと思います。

二つ目の「スラッシュどうしをつなげる」については、僕の場合、電通で培ったものと、地元を活性化したい想いを掛け合わせています。例えば地域のお祭りのときにプレスリリースを書いたり、マーケティング施策を考えたり。

そういう人材は地方に行くほど少なくなるので、過去の経験によって地域の役に立てているなという実感があります。他にも頼まれたことには何でも首を突っ込んで、電通で培ったスキルや知識を地域に還元していきたいと思っています。

今やっている人材開発の仕事の知見を福祉法人で生かすことも考えていますし、趣味のトレイルランニングでも、走るだけではなく、レースを作るという夢があります。それが地元で実現できれば、地域はもっと盛り上がってくるでしょう。さらにいえば、そうやってトレイルランニングによって人生が豊かになる人が増えれば、人材開発の仕事にもつながってくるかもしれません。

そうやって自分のスラッシュを掛け合わせていくことで、僕ならではの生き方につながっていくのだと思っています。

アルムナイ勉強会を終えての振り返り

講演後はグループに分かれ、各グループで講演の感想を共有したり、自身のつながりについて考えたりと、対話の時間が設けられました。

今回のIHIのアルムナイ向け勉強会の目的は、アルムナイへの価値提供。同社はアルムナイネットワークを通じて、自社とアルムナイとのビジネス協業につなげようとしています。その第一歩として、まずは今回の勉強会により、アルムナイ同士のつながりを強めると同時に、アルムナイがビジネスの相談をするきっかけづくりをすることが狙いでした。

実際にアルムナイからはこのような感想が寄せられています。

「それぞれの経験には何らか自分なりの関連性があって動いてきており,決して無関係ではないんだと実感した」

「元IHI従業員として共通の想いや価値観を持ったメンバーが多様なフィールドで活躍していることを知り,新たな気付きを得ることができた」

「専門性や知識ばかりでなく,IHIで経験した様々なものがその後のキャリアに活かされていることを認識した」

ご紹介した講演にもあった通り、過去のスラッシュとの縁は切れてしまいやすいものだからこそ、意図的につながり、交流やつながりを深めることが重要です。ビジネス協業などの成果につなげる上で、「まずはアルムナイネットワークでアルムナイにどのような価値を提供するか」という視点を持ち、関係性を温めることの重要性を感じるイベントでした。